コンベンションで彼女のソロリサイタルを初めて聞きましたが、小さな身体からは想像出来ないほどヴィヴィッドで、且つ艶やかな演奏をする方です。楽器と一体化して歌っている印象を受けました。
演奏会翌日、シルヴィアとローマにある寿司屋へランチに行きましたが彼女は日本食が大好きなようで、特になぜかガリばかり食べていました。
彼女があまりにガリに夢中なので「シルヴィア、それは口をスッキリさせる時に食べるもので、大概の日本人はそんなに食べないんだよ」と教えてあげると、「あら、日本人は食べないのね」とばかりに僕の皿のガリまで食べてしまいました。
少女の様な気分屋さんで、彼女の演奏の素直さはこういう性格から来ているんだなと感じました(笑)。非常に素敵な方で、また会えるのを楽しみにしています。
シルヴィアが日本に来たら、どこに案内してあげたいですか?
僕は神田と秋葉原の中間くらいの所に住んでいるので、その辺りの文化には少し詳しいのですが…(笑)
どこへでも一番のお気に入りの場所へ…と言われたら迷わず京都の龍安寺ですね。あの場所は庭の美しさで知られていますが、そこへ向かうまでの道中に聞こえてくる音が素晴らしいんです。
静寂の中をザクッ、ザクッと小石を踏みしめるながら歩いていくと、風に揺れて笹の擦れ合う音がさらさらと聞こえてきて、水のせせらぎが聞こえ、どこからか蝉の鳴き声がしてきて…
まるでテクノかミニマルミュージックの様にパートが重なってゆき、最後にはそれらの音が全部重なって、ハーモニーになって聞こえてくるんです。
サウンドスケープですね。お話を伺っているだけで音が聞こえてきそうです。
蝉の鳴き声の中に、微かに鈴虫の音も混じってくるんですよ。もう誰かがCDでも流してるんじゃないの?とさえ思ったりもします(笑)
そして混ぜに混ぜまくった音を聞かせたあげく枯山水の石庭に到着したらいつのまにか無音ですよ。庭師の方に感服です。
日本が世界に誇るサウンドスケープだと思います。そういった日本の音風景の楽しみを紹介してあげたいですね。
最後に、今回のイタリア訪問を通じて、最も印象に残ったことをお話いただけますか?
ローマ滞在の最終日の朝、空港へ向かう前に1時間ほど余裕があったので、バチカンのサンピエトロ大聖堂を訪れたんです。やはり世界最大のカソリック教会ですし、その圧倒的な存在感にまずは驚いたのですが、何よりも寺院の中で鳴り響いていた、心の中にまで浸透してくるようなオルガンの音色に大きな衝撃を受けました。
と、同時にやはり芸人根性というか私は何でもネタにしたがる節がありまして、
「オクトバスフルートからピッコロまで使って
多重録音+爆音スピーカーでパイプオルガンの曲やろうかな…」
とひらめいてしまい、神聖な場所にもかかわらず、一人でニヤニヤしていました(笑)。
この他にもイタリア滞在中には様々な発見とひらめきがありましたね。そのほとんどは日本人ならでは、という発想です。サンキョウ・キングマフルートというさらに沢山の音が使用可能になった楽器のお陰で、そのイメージを形に出来そうです。
色々とお話いただき、ありがとうございました。